宇治自治体問題研究所
巨椋池干拓地
巨椋池干拓地に関する資料を、ランダムになりますが、随時掲載します。
巨椋池農地基盤整備事業推進協議会「完成記念リーフレット」から
巨椋池農地基盤整備事業推進協議会「完成記念リーフレット」から
久御山排水機場の排水区域
「・古川から宇治川に排水している久御山排水機場では、宇治川が計画高水位を超過した場合、排水を停止。」
近畿地方整備局 2019(H31)年4月22日「淀川水系における中上流部の河川改修の進捗状況とその影響検証にかかる委員会 第3回検証委員会資料P16」から
巨椋池農地基盤整備事業推進協議会「完成記念リーフレット」から
排水機場
「二八年大水害~堤防が切れた~」から
発行:巨椋池土地改良区 発行日:2015(H27)年2月1日
■巨椋池排水機場
巨椋池排水機場は建設から60年以上が経過し、また、流域の土地利用や降水量の変化等により、湛水の可能性がますます高くなってきました。
このため、排水能力を向上させることによって、将来にわたり農地湛水や洪水被害の未然防止などのた、排水機場を全面的に改修することになりました。工事は、国営総合農地防災事業により平成9年度から平成18年度に事業費162億円で実施されました。
排水能力 80㎥/s。(旧施設40㎥/s)
■久御山排水機場
巨椋池排水機場に隣接して久御山配水機場が昭和48年に設置。昭和48年に30㎥/sのポンプ1基設置。
昭和61年7月20日から22日にかけて、古川流域は総雨量321.5ミリ、最大時間雨量75.0ミリという、かつてない豪雨に見舞われ多数の家屋等が浸水し多大な被害を受けた。昭和62年度に30㎥/sのポンプ1基増設。
その後、流域の開発がさらに進行し、古川の改修工事の進捗から、さらに平成4年に30㎥/sのポンプ1基増設された。
現在計3基で90㎥/s。
■城陽排水機場
昭和61年7月20日から22日の降雨は、久御山排水機場の中で記述している通り記録的な降雨となった。この降雨により古川流域の至るところで溢水し、降雨が止んで3時間経っても古川周辺は一面泥海の状態となっていました。巨椋池干拓地の一部を造成して宅地化した宇治市遊田地区は2日間にわたって湛水しました。
この出水により、被害は宇治市、城陽市、久御山町に及び、床上浸水197戸、床下浸水3,077戸、田畑冠水474.3ヘクタールと甚大なものでした。
このようなことから、人家被害の集中した宇治市及び城陽市域に分けて対策を講じることとし、宇治市域に対しては久御山排水機場のポンプ増設、城陽市域に対しては分水路及び排水機場を新設し、古川流量の一部を直接木津川に放流することとしました。
ポンプ規模10㎥/s(5㎥/s 2台)の排水機場を昭和62年から工事着手、平成2年に完成。平成7年8月30日に最大時間雨量61ミリを記録し、近鉄寺田駅を中心とした道路、民家が浸水。このため平成9年3月に3台目のポンプが増設された。
ボタンを押すと、リアルタイムの ①巨椋池排水機場内外の水位、主ポンプの運転状況、②巨椋池地区排水流域の水位を確認できます(繋がらないときは時間を空けて、再度試みてください)。
撮影:2021年5月21日
久御山排水機場
撮影:2020年12月27日
久御山排水機場
巨椋池排水機場
撮影:2020年12月27日
巨椋池排水機場
撮影:2021年5月21日
巨椋池排水機場手前の排水幹線
撮影:2021年5月21日
撮影:2021年5月30日
撮影:2021年5月30日
排水機場隣の堤防から木津川望む
城陽排水機場
巨椋池地域排水計画
承水溝第一号が現在の名木川
承水溝第二号が現在の井川
承水溝第三号は現在もその名
「承水溝第一号が現在の名木川、承水溝第二号が井川であり、承水溝第三号だけが現在もその名で呼ばれています。ともに干拓時に造成されたもの」(巨椋池土地改良区発行「二八年水害~堤防が切れた~」P95~96)
巨椋池干拓地の完成図
宇治市史第4巻P431
事業内容とその特色
宇治市史第4巻P428~429
本事業は、巨椋池の排水によって634ヘクタールの干拓新田と沿岸既耕地約1,660ヘクタールの土地改良事業を行うものである。干拓事業の基本は、巨椋池の悪水をいかに排水するか、さらに灌漑用水をどのように確保するかである。この工事で最も需要な排水幹線と用水幹線は、地形を利用して土地の高低に応じて計画されたことが注目される。
【排水】上段(南部)・中段(東部)・下段(湖底)排水の3段にわけており、すべての排水路は湖岸最低地に新設された東一口の排水機場に集めている。
上段排水は、巨椋池東南丘陵と湖岸南部(宇治市・城陽市)約3,125ヘクタールで、改修した古川は安田付近で承水溝第一号・第二号を合流させて東一口へ。中段排水は、湖東部の太閤堤以東及び北部の既耕地645ヘクタールで、折居川下流を改修しさらに承水溝第3号幹線を利用しながら湖岸に沿って東から北へ迂回させ、二の丸池付近で承水溝第四号と合流して東一口へ。下段排水は、池の湖底とその周辺低湿地を含む約1,240ヘクタールで、湖底は平均1,100分の1の緩勾配であるので中央に大排水幹線を新設して東一口へ(図26参照)。
【用水】用水の大部分は宇治川を水源とし、用水幹線は、これまた地形を利用して新設されている。
取水口は、宇治川の国鉄鉄橋付近に新設し、ここから旧槇島村の薗場に導き、ここを用水幹線第二号と第三号の分水点とした。第二号幹線路は、槙島堤に沿うて北へ流下させて槇島・向島の既耕地約370ヘクタールを、第三幹線路は、直接干拓新田へ導水した。残りの干拓新田75ヘクタールと池の南岸の一部の既耕地の用水は、木津川・古川から導入するもので、旱魃(かんばつ)の際でも用水の不足はおこらない。これらの用水路は、既述の排水幹線兼用のもので、専用用水路は一号・二号・三号の幹線に限られている。
許容湛水深30センチ
「二八年大水害」112ページから
発行:巨椋池改良区
*旧況
「二八年大水害」111ページから
本地区における「旧況」の考え方
昭和48年当時の土地利用状況(農地や宅地等の分布)を旧況として設定されています。隣接する建設省久御山排水機場が完成し、流域全体の排水機構がほぼ現在の形態になったのが昭和48年であることから設定された。
農地における湛水が30センチという区分は、水稲の許容湛水深の考え方で、水稲の穂や葉先が泥水にかぶらない水深が30センチであり、かぶった場合でもできるだけ24時間以内に配水し、水稲の被害を最小限にするという考えからです。
水稲の成長と各期の草丈の関係は、穂ばらみ期における湛水被害が最も大きく、この時期の草丈が30センチ以上に達していること、およびわが国における水害が7月から9月にかけて多く発生していることを勘案し、主として穂ばらみ期における湛水被害をふせぐことをねらいとして許容湛水深を30センチとされています。
また、30センチを超えても、穂ばらみ期以外においては1から2日の湛水であれば被害も5~30パーセント程度であり、3日以上であれば被害が急増すること、穂ばらみ期においても葉先が露出しておれば、1~2日の湛水で20パーセント程度の被害であるので、許容湛水を超える場合の継続時間は24時間を限度とされています。
ただ、畑作物については湛水は認められませんが、(排水機場のポンプ能力の)計画においては考慮されていません。
現在のポンプ能力80トン
「二八年大水害」109、112ページから
巨椋池排水機場の築造から60年以上が経過し、排水機場を全面的に改修することになり、改修工事が平成9年度から平成18年度に事業費162億円で実施されました。
新排水機場は、旧排水機場の1.8倍の毎秒80トンの排水能力。原動機の位置が現在の宇治川の計画高水位(排水機場地点OP16.62)以上に設置されている。昭和28年の水害のように堤防が決壊しても、原動機が水に浸からない位置に設置されている。
計画降雨生起確率1/20年
巨椋池排水機場の排水能力を決める対象雨量や排水量を決める計画。
計画基準降雨は、1/20年確率降雨を採用。3日間連続降雨量で260.6ミリ。
国営総合農地防災事業の計画基準降雨は、原則として10年に1回程度発生する降雨を採用することとされてますが、旧況の施設機能がこれを上回る場合はこれを作用することとされています。旧巨椋池排水機場は、1/20年確率降雨に対応し得る施設機能を有していたことから、1/20年確率降雨が採用されました。
80トンの根拠
(許容湛水深30センチに対応するポンプ能力より)さらに、大きな能力のあるポンプを設置し、排水路整備を行えば、湛水面積を少なくすることはできますが、そのためには膨大な事業費が必要となりますし、農業用の整備である以上、そのことによりどれだけの農業生産が増加し、効果があるのかが問われます。
このため、現況農地の排水状況を旧況の湛水状況の水準まで回復させるために必要となる排水施設規模(ポンプ排水量)を決定することになります。
試算された結果、計画排水量を80トンとすることにより、湛水深30センチ以上の湛水面積も旧況と一致することになり、したがって、計画ポンプ排水量を80トンと決定されました。
つまり、計画通りの降雨の場合でも農地に湛水することが見込まれているのです。もちろん、30センチ以上の湛水については24時間以内となるポンプ能力となっています。
近鉄線西
近鉄線西
近鉄向島駅西
近鉄向島駅西
承水溝3号
巨椋池排水機場手前
近鉄向島駅西
撮影:2021年11月11日
古川とサイホン入口側(写真の左)
撮影:2021年11月11日
排水幹線側の出口(道路下のトンネル)
撮影:2021年11月11日
サイホン入口側
撮影:2021年11月11日
サイホン出口側
撮影:2021年11月11日
サイホン入口側
撮影:2021年11月11日
サイホン出口側
撮影:2021年11月11日
サイホン出口側
撮影:2021年11月11日
サイホン出口側から入口側見る(古川)
撮影:2021年11月11日
排水幹線
撮影:2021年11月11日
撮影:2021年11月11日
撮影:2021年11月11日
撮影:2021年11月11日
主排水8号
撮影:2021年11月11日
撮影:2021年11月11日
撮影:2021年11月11日
大内サイホン
中内サイホン
観世サイホン
用水管路
用水の取水口
■吹前揚水機場
宇治市史第4巻(上記)に、干拓完成時の「取水口は、宇治川の国鉄鉄橋付近に新設」と書かれている。現在の取水口は吹前揚水機場(下図参照)。
建設経済新聞(2021年5月7日付)に「吹前揚水機場は、昭和56年設置後約40年が経過」と掲載されている。
巨椋池干拓田の用水管路
提供:巨椋池土地改良区2021年5月
■吹前揚水機場
撮影2021年11月5日
撮影2021年11月5日
撮影2021年11月5日
撮影2021年11月5日
撮影2021年11月5日
京バイ、近鉄交差付近
撮影2021年6月10日
排水溝をまたぐ用水管路
撮影2021年6月10日
■かつての自然取水口及び宇治揚水機場位置図
「巨椋池干拓六十年誌」P67 発行:巨椋池土地改良区
■旧宇治揚水機場
「巨椋池干拓六十年誌」P69 発行:巨椋池土地改良区
■干拓以前の用水
「巨椋池沿岸農地の干拓以前の主な灌漑用水源は、湖南地方(巨椋池南方・・引用者注)は木津川を水源とする取入樋門6か所、その他古川と東方の山地などからの流出水で約1000余町歩をかんがい、湖東地方(巨椋池東方)は主として宇治川で樋門により自然取水しかんがいを行っていたが、砂利採取などの結果河川水位が低下し、自然取水が出来なくなったため、宇治川筋では水車や10か所に揚水機を設け約659町歩の灌漑が行われていた。」「当時の宇治川の堤防はせいぜい2m足らずの低いものであったこともあり、多くの水車がかけられた。」(「巨椋池干拓六十年誌」P67)
■旧自然取水口
1996(H8)年5月撤去
「巨椋池干拓六十年誌」P68 発行:巨椋池土地改良区
■干拓時の揚水計画
「農業用水は宇治川及び古川に依存し、宇治川掛かりについては、宇治橋下流左岸に自然取水口を昭和10年に設け、干拓田618ha、既耕地339ha合わせて957haに対して、2.1㎥/sを取水することにした。」(「巨椋池干拓六十年誌」P67)
■府営宇治用水改良工事
■巨椋揚水
「宇治川が河川改修等により河床低下が進み、自然取り入れからの取水が困難になることが、頻繁に生じたことから、自然取水の補充用として揚水機場を自然取水口より下流約200mに府営宇治用水改良事業により昭和23年11月着手、昭和26年3月に竣工した。
用水計画は、ポンプ2台で、3.00㎥/s揚水し、面積832haにかんがいするもので、このとき併せて自然取水量についても2.40㎥/sに改定した。
運転方法は、自然取水の取水量が半減したときに1台稼働する。目安として、自然取水口の推移がOP14.56m以下となった場合から稼働し、自然取水が不能となった場合2台稼働する。計画運転時間は19時間である。」(「巨椋池干拓六十年誌」P68)
「昭和40年代後半には、農業用水が著しく汚濁し、水稲に被害が出始めたため、土地改良区として関係機関に対策を要望するとともに、独自に水質調査に取り組むことにした。」
調査の結果、関係機関と協議してきた結果、「巨椋池地方水質汚濁対策推進協議会が昭和48年7月10日発足、水質汚濁対策として、水質汚濁対策事業に取り組むことにした。
この事業は、農業用水の水質保全と効率的な排水を行うことを目的として」「最終的に594aを対象に、揚水機場と水路工事などが行われた。」「水源は水質が比較的安定している宇治川に求め、宇治市吹前に揚水機場を新設(ポンプ5台)するとともに、地区内道路に管路(口径Φ250~1,350mm)を編状に19km埋設し、宇治川の水を干拓田などに直接送水するもので取水量は2.55㎥/sである。」(「巨椋池干拓六十年誌」P71)
(よしじま)
巨椋池干拓の完成図面の近鉄向島の鉄橋西側(下流左岸)に、揚水機の記号がある。
撮影:2021年5月29日
撮影:2021年5月29日
撮影:2021年5月29日
■葭島揚水機
■葭島揚水
「宇治川観月橋下流左岸沿いの葭島地区123haの農地へのかんがいは、以前は自然取水でかんがいが可能であったが、宇治川の河床が年々低下し、自然取水が困難となったことから、昭和21年度から府営かんがい排水事業に着手し昭和23年度に葭島揚水機場を竣工。以降も水位低下は収まらず、昭和54年度に恒久対策として、河川内に水中ポンプ(口径400mm2台)を設置し、現在は2段階で揚水している。宇治川からの取水量は0.57㎥/sである。」(「巨椋池干拓六十年誌」P72)
「巨椋池干拓六十年誌」P72 発行:巨椋池土地改良区
宇治川の低水位の推移(向島)
「巨椋池干拓六十年誌」P72 発行:巨椋池土地改良区