宇治自治体問題研究所
国土交通省:川の防災情報
クリックすると、リアルタイムで、天ケ瀬ダムの貯水量、放流量や、宇治川の各観測地点の水位、ライブ映像が見えます。
2つの画像は国交省ホームページから
天ヶ瀬ダムの放流量と宇治川の状況
約680トン/秒の放流による宇治川の状況
撮影日 2021年7月10日午後
備考 7月3日 熱海市土石流被害
7月9〜10日 九州南部豪雨
7月7日 鳥取・島根に豪雨
天ケ瀬ダム 2021年7月10日14時15分
釣り橋(左岸から上流)7月10日14時22分
宇治川右岸より上流 7月10日15時46分
ダム湖 2021年7月10日14時39分
塔の島(右岸より)7月10日15時24分
塔の島は立入禁止になっていました。
宇治川右岸より下流 7月10日15時46分
天ケ瀬ダム 2021年8月19日12時19分
塔の島上流 2021年8月17日13時40分
天ケ瀬ダム 計画放流量840㎥/
宇治橋上流側 2021年8月17日13時06分
瀬田川洗堰
●一日の時間差で洪水調整
1)雨量により、宇治川・木津川・桂川、そして淀川の水位が上昇しはじめます。
2)琵琶湖の水位はほとんど上昇しませんが、下流の水量がピークを迎えます。このため洗堰の流量を制限します。
3)下流の流量が減少しはじめます。琵琶湖では水位が上昇し続け、洗堰を開け琵琶湖の水位を下げます。
瀬田川洗堰~洗堰の管理/水位管理・・・
琵琶湖の水位管理は、瀬田川洗堰操作規則(平成4年3月制定)により非洪水期には基準水位+0.30m以下を維持し、洪水期には琵琶湖の水位をあらかじめ基準水位-0.20m及び-0.30mに下げておくことで、洪水時の最高水位をさげるようにしています。また、渇水時には基準水位-1.50mまでを利用して木津川・桂川ダム群と一体となり下流淀川で必要とされる水道水、工業用水、農業用水、河川維持流量の補給を行います。
淀川本川の洪水は、主に台風による宇治川、木津川、桂川の流量増加が原因でおこり、特に木津川の洪水に支配されます。琵琶湖の水位が最高になるのは、淀川本川の流量がピークをすぎて減少しはじめたあとです。この時間差は約一日という特徴があります。洗堰はこの特徴を利用して、琵琶湖と淀川の両方の洪水を調節するのです。
●琵琶湖の水位の上昇・低下 時間差説明図
下記は琵琶湖河川事務所のホームページからの転載です。
資料 京都新聞WEB 2021年12月1日付
瀬田川洗堰の放流量、一時的に4倍増
国土交通省琵琶湖河川事務所は30日、琵琶湖から下流への水量を調節している瀬田川洗堰(あらいぜき)(大津市)の放流量を、毎秒15トンから同65トンに増やした。12月3日までの一時的な措置で、琵琶湖の水位への影響はないとしている。
下流の関西電力宇治発電所(京都府宇治市)は、専用の導水路を通して琵琶湖から直接、毎秒44トンの水を取り入れている。同発電所は工事に伴う運転停止で取水を一時止めており、放流量を増やさなければ宇治川や淀川地域の水道用水や工業用水が不足するという。
三川合流部の特徴
(宇治川・木津川・桂川)
宇治川が最も背水(バックウォーター)の影響を受けやすい
破線がHWL、実線が河床高。水面勾配の緩い宇治川(青)や桂川(赤)の羽束師まで背水が生じる。
近畿地方整備局 淀川水系における中上流部の河川改修の進捗状況とその影響検証にかかる委員会
第2回(2019年3月19日)配布資料2-1「前回委員会における指摘事項(淀川水系の治水の考え方)」
2) 宇治川の寄与を過大に描画。 出水時の三川合流地点での流量は、 木津川 > 桂川 > 宇治川 である。琵琶湖からの流下による寄与 は、仮に洗堰全開でも最大800㎥/sで、 合流地点の高水流量の1割に満たない。
3) 三川合流部での遊水機能を無視。
中川晃成氏の指摘
中川晃成氏(龍大里山学研究センター副センター長)が、琵琶湖河川事務所の上記の「琵琶湖の水位の上昇・低下 時間差説明図」の説明について右の指摘をしています。
詳細は、本ホームページ「大戸川ダムと宇治川」のダウンロード資料(パート2-1)を参照してください。
1)三川合流部での治水上の最大の問題である背水の発生と、そこがそのような 地形構造にあることを表現しない。
天ヶ瀬ダム
国交省天ヶ瀬ダム管理支所発行リーフ「天ヶ瀬ダム」より(2020年9月6日ダウンロード)
コンジェットゲート
3門、放流量1,100㎥/S(能力)、840㎥/S(計画最大放流量)
クレストゲート
4門、放流量680㎥/S(能力)
天ヶ瀬ダムの役割と効果
■洪水を防ぐ
宇治自治問研コメント
下の「洪水調節の実績」で、昭和57年台風10号と平成25年台風18号を比較。最大流入量は1,370と1,360でほぼ同じ。ところが最大放流量は840と1,160で大きな違い。前者は予備放流をしたが、後者は予備放流をしなかった。
■電気を作る
ダム下流の天ヶ瀬発電所は最大使用水量186.14㎥/Sで最大発電力92,000kwの発電(人口約10万人の電力消費量)を行い、また上流にある喜撰山発電所は天ヶ瀬ダム湖(鳳凰湖)を下部調整池として最大使用水量248㎥/sで最大466,000kwの純揚水式発電(人口約50万人の電気消費量)を行っています。
■飲み水を供給する
宇治市、城陽市、八幡市、久御山町に供給する上水道用水として最大0.3㎥/s(暫定豊水利水を含め最大0.9㎥/s・約36万人分)をダム湖より取水しています。
◎ 予備放流(第15条)
所長は、洪水期において、水位が予備放流水位(標高58.0m)を超えている場合に、洪水調節を行う必要が生ずると認めるときは、その時点での台風の位置及び予測雨量を勘案し、水位を予備放流水位に低下させるため、毎秒840 ㎥の水量を限度として、ダムからの放流を行うものとする。ただし、気象、水象その他の状況により特に必要と認めるときには、当該限度にかかわらず、下流に支障を与えない限度の流量を限度として、ダムから放流を行うことができる
◎ 洪水調節(第16 条)
所長は、洪水期においては、次の各号により洪水調節を行わなければならない。ただし、気象、水象その他の状況により特に必要があると認めるときは、このかぎりではない。
1 流入量が840 ㎥/s 以上のとき(次に掲げるときは除く)毎秒840 ㎥の水量を放流すること
2 と3 は 2 次調節の関係の規定
○ 予備放流には第1 次と第2 次がある。
・第1 次予備放流:水位を72.0m から64.8m まで下げる
・第2 次予備放流:水位を64.8m から58.0m まで下げる
天ケ瀬ダムの水位管理
以下は、国土研報告会&総合討論「台風18号水害と国土の安全を考える」(2013年12月21日)開沼純一氏の報告から抜粋
■サーチャージ水位
洪水時に一時的に貯めることができる最高水位 78.5m
■常時満水位
平常時(非洪水時)に利水目的のため貯めることが出来る最高の水位
■洪水期制限水位
洪水期(6月16日~10月15日)に利水目的のため貯めることが出来る最高水位 72.0m
■発電最低水位
発電に利用できる指定の水位68.6m(天ヶ瀬ダム再開発で1.5m下げ、67.1mにする)
■最低水位
堆砂面の高さの水位 58.0m
★ 非洪水期は常時満水位78.5mと発電最低水位68.6mの間の量が発電に使える
天ケ瀬ダムの容量配分図
天ケ瀬ダムにおける洪水調節時の操作規則から
2013(H25)台風18号
2013(H25)年9月16日
天ケ瀬ダムの建設(1964年)以来初めて、緊急放流でクレストゲートから放流。
最大1,160トン/秒を放流
クレストゲート190トン
予備放流は実施せず
天ケ瀬ダム統合管理事務所の「防災を考える市民の会」への下記回答参照。
国土研報告会&総合討論「台風18号水害と国土の安全を考える」(2013年12月21日)の報告(中川学氏)から
天ケ瀬ダム 2013(H25)年9月16日撮影
提供:国交省近畿地方整備局
国交省近畿地方整備局「平成25年9月 台風18号洪水の概要」より
2013年台風18号にともなう天ケ瀬ダムの操作等について
宇治・防災を考える市民の会が2013年11月11日付で、淀川河川事務所、淀川ダム統合管理事務所に質問。その回答等を報告。
以下は、国土研報告会&総合討論「台風18号水害と国土の安全を考える」(2013年12月21日)の報告(梅原孝氏)から抜粋
国交省HP「河川に関する用語」より
国交省HP「河川に関する用語」より
2013(H25)台風18号
宇治川の状況
以下の画像資料は、国土研報告会&総合討論「台風18号水害と国土の安全を考える」(2013年12月21日)での各氏の報告から
上記にあるように、天ヶ瀬ダムから最大1,160トン(クレストゲート190トン、コンジットゲート790トン、天ヶ瀬発電所180トン)を放流。宇治橋下流で1,300トン。宇治川、山科川の影響が下記の写真である。
提供:国土研
2019(H31)年4月22日
宇治川堤防の安全性の課題
指摘②:宇治川の堤防は高い水位が長く続く特殊な状況を踏まえた上での強化を検討すべき。
・宇治川では平成25年洪水において、全川にわたり、計画高水位を超過し、堤防漏水が多発。
・近年でも全国的に堤防被害が発生しており、特に宇治川では、長時間高水位が続くことから堤防の安全性が課題。
1982年 台風10号
2013年 台風18号
(流入量1360、放流量1160)
国土交通省が「予備放流により貯水位を65m程度まで低下させて、洪水調整をしました」と、天ヶ瀬ダムの洪水調節の実践事例として紹介する1982(昭和57)年台風10号。予備放流をしなかった2013(平成25)年台風18号。
1982(S57)年 台風10号
クリックすると、気象庁ホームページ「災害をもたらした気象事例」の「昭和57年7月豪雨と台風第10号」、「7月1日~8月31日」の日々の天気図と日降水量の地図のページに飛びます。
■宇治自治問研(T)コメント
気象庁HPの日降水量の図を見る限り、天ヶ瀬ダム流域は7月豪雨の影響はほぼないと思われる。予備放流の判断は、台風10号のみに着目すればよいと思われる。
■昭和57年 台風10号
7月24日に日本の南東海上で発生した台風第10号は、8月1日に紀伊半島の南海上を北上、2日00時頃渥美半島に上陸し、2日早朝には富山湾から日本海に進んだ。 2日15時には温帯低気圧に変わり、東北地方に接近した。 四国地方東部、中国地方東部から東北地方にかけての広い範囲で大雨となり、近畿地方から東北地方にかけては暴風が吹いた。8月1日には、静岡県石廊崎で10.15mの有義波高を観測し、観測開始(昭和51年)以来、第1位の記録となった。
2013(H25)年 台風18号
上記2つの資料は、H26年度近畿地方整備局研究発表会論文集の防災・保全部門:NO.19「平成25年台風18号における淀川水系ダム群の統合操作について」近畿地方整備局(松田氏)ほかから
天ヶ瀬ダムの操作と降雨量(国土交通省資料より)
天ヶ瀬ダムの操作と降雨量(国土交通省資料より)
国土研報告会&総合討論2013年12月21日 上野鉄男氏の資料から
■宇治自治問研(T)コメント
H25年台風18号は近畿または伊勢湾をめざす進路であり、大雨の可能性は十分予期できたと思われる。ところが「降雨予測の結果、洪水調節が必要と認められなかった」(「防災市民の会」への回答)として予備放流せず。結果的に予備放流しなかったのは失敗だった。どこに問題があったか、検証が必要だ。
ダムは予備放流をすることで、洪水調整能力をより高めることができる。これまでも予備放流をしてきた。操作規則で予備放流をすることになっている。
予備放流は基本。H25年台風18号で基本操作ができなかった原因を検証した文書が見当たらない(2021年9月23日記)。あればご教示を。
昭和57年台風10号の進路
(流入量1370、放流量840)
国交省:水文水質データベースより作成
国交省:水文水質データベースより作成
(Tコメント) 三川合流部の水位が上がり、宇治観測所との水位差が急速に縮小している。先に三川合流部付近の水位が4mぐらい上昇し、その後に宇治観測所の水位が顕著に上昇を始めている。
下記グラフは、上記グラフに羽束師(桂川)、飯岡(木津川(京田辺市))を書き加えた
国交省:水文水質データベースより作成
国交省:水文水質データベースより作成
国交省:水文水質データベースより作成
国土研の指摘から
1,140㎥、1,500㎥放流の
天ヶ瀬ダム再開発事業の危険性を考えたい
以下は、国土研報告会&総合討論「台風18号水害と国土の安全を考える」(2013年12月21日)での開沼潤一氏の指摘から
なお、15条、16条は、天ヶ瀬ダム操作規則の条文で、15条は予備放流、16条は洪水調節の規定。
・ 台風18 号豪雨に対して、予備放流は全く行われなかった。(第15 条無視)
・ 洪水調節時の最大放流量とされている840 ㎥/s を超える放流が6 時間行われ、最大の放流量は1,160 ㎥/s で、840 ㎥/s を約300 ㎥/s 超えた。(第16 条無視)
・ 840 ㎥/s を超えて流された水量は約400 万㎥となる。(6 時間×3,600 秒×300㎥/s×約2/3=432 万㎥)その量は発電に使用される水量に相当する。(洪水期制限水位72.0m と発電最低水位68.6m の間の水量)。第1 次予備放流をするだけで、操作規則第16 条の規定の放流量は守れた。
・ ダムの効果としてダムに貯めた水量約790 万㎥と記述されているが、その量は空き容量(洪水期制限水位とサーチャージ水位との間の容量[968 万㎥])で対応できる量。
以下は、国土研報告会&総合討論「台風18号水害と国土の安全を考える」(2013年12月21日)での池田碩氏の指摘から
台風18号豪雨天ヶ瀬ダム緊急放流
宇治川天ヶ瀬ダム(多目的ダム)は、9月16日午前8時40分、流入量が最大毎秒1,360m3 の現行天ヶ瀬ダムの想定内の洪水にもかかわらず、ダム水位が76.0m を超えたということで、緊急放流・防災操作によって最大毎秒1,160m3(計画840m3)(クレストゲート190、コンジトゲート790、天ヶ瀬発電所180)の放流を実施した。その結果宇治川ははん濫の危機が生じ、6万2千人の市民に避難指示が発令されるというかってない事態が起こった。(1965 年9 月17 日毎秒1528m3、1972 年9 月16 日毎秒1281m3、1982 年7 月31 日毎秒1370m3 の洪水が天ヶ瀬ダムに流入したが、計画の840m3 を超える放流をおこなっていない。)
今回、天ヶ瀬ダム緊急放流によって、3つの問題が明るみに出てきた。
1、ダムは洪水に対して一定の範囲内で効果を持つが、操作を間違えば人災ともいえる問題を引き起こす可能性があること。
2、宇治川右岸堤防(京滋バイパス上下流)が浸透破堤の危機に直面したこと。天ヶ瀬ダム再開発による宇治川洪水時毎秒1,140m3 放流および琵琶湖後期放流対応時毎秒1,500m3 放流計画に関して、宇治川堤防の安全性に疑問を呈した私たちへの国土交通省の宇治川堤防安全説明が実際は安全ではないことを明らかにした。
3、最大毎秒1,160m3 の緊急放流に伴い下流の宇治川の水位が急上昇し、各地点で計画高水位・危険水位を突破し、宇治川はん濫の危機が生じたこと。
今回の事態を機に一部に天ヶ瀬ダム再開発を促進せよという声があるが、むしろこれを機に天ヶ瀬ダム再開発による宇治川洪水時毎秒1,140m3 放流および琵琶湖後期放流対応時毎秒1,500m3 放流計画の危険性について考えたい。
■現状の天ヶ瀬ダムの洪水調節操作
天ケ瀬ダム洪水調節操作「琵琶湖周辺の治水対策の現状」2002(H14)年8月8日 近畿地方整備局
洗堰と天ケ瀬ダムの連携操作による淀川洪水調節の仕組み(天ヶ瀬ダム再開発計画の見直し案説明資料)2003(H15)年4月21日 近畿地方整備局
■洪水時の瀬田川洗堰操作
下記は、天ヶ瀬ダム再開発の調査検討(とりまとめ)2005(H17)年7月21日付け国交省近畿地方整備局 淀川水系流域委員会題30回淀川部会※審議資料1-5河川管理者提供資料より
◇洪水時の瀬田川洗堰操作
「瀬田川洗堰操作規則:平成4年策定」は、下流の淀川の基準地点である枚方地点の水位が+3.0mを超え、且つ+5.3mを超える恐れがあるときから、枚方地点の水位が低下し始めたことを確認するまでは、洗堰を全閉することとなっています。
また、洗堰から下流は大戸川や信楽川、田原川など河川が流入します。下流の淀川や宇治川の洪水時にそれらの流域からの洪水を調節するために天ヶ瀬ダムがあります。瀬田川洗堰操作規則では、この天ヶ瀬ダムが洪水調節を行っている時も、天ヶ瀬ダムの洪水調節機能が十分に発揮出来るように、全閉を行うこととなっています。
更に、天ヶ瀬ダムは洪水調節容量を確保するため、予め放流(予備放流)を行ってその容量を確保することになっています。また、天ヶ瀬ダムの洪水調節が終わっても、天ヶ瀬ダムの貯水位が高いままでは、次の洪水が来たときに、洪水調節が出来ない恐れがあるため、すぐに貯水位を制限水位まで下げておくことが必要であり、そのために天ヶ瀬ダムから放流(後期放流)を行います。このときの天ヶ瀬ダムの予備放流や後期放流洗堰のときにも、その放流を速やかに行えるように、操作規則では洗堰からの放流を制限することとなっています。