宇治自治体問題研究所
市の財政②
宇治市の財政
発行 2020年8月
要約版
3 宇治市財政の課題
経常収支比率 宇治市だけでなく全国的課題
財政の硬直化を示すとされる「経常収支比率が高い」という課題です。
以下に示すように、この問題は、宇治市だけでなく、全国的な問題です。
経常収支比率が高くなる原因を、冷静に認識することが重要です。原因分析を間違うと、対策を間違うからです。
個々の自治体の財政運営上の問題だけに原因を求めると、対策は「選択と集中」「さらなる行政改革」となります。根本問題が解決しないので、「さらなる行政改革」を永遠に繰り返すことになります。
市民サービスを削減すれば、経常収支比率は改善します。しかし「数値は良くなったが、市民生活は困窮した」では本末転倒です。
1)目的別歳出 全国市町村と比較
■民生費が増加 宇治市も全国も
宇治市(目的別歳出)
宇治市の決算カード(各年度)から作成
全国市町村(目的別歳出)
総務省HP「全国市町村決算の概要」(各年度)から作成
2)性質別歳出 全国市町村と比較
■「扶助費」が増加 宇治市も全国も
宇治市(性質別歳出)
宇治市の決算カード(各年度)から作成
全国市町村(性質別歳出)
総務省HP「全国市町村決算の概要」(各年度)から作成
3)歳入 全国市町村と比較
■「税収+地方交付税+地方交付税」
が増えていない 宇治市も全国も
宇治市(歳入)
全国市町村(歳入)
宇治市の決算カード(各年度)から作成
総務省HP「全国市町村決算の概要」(各年度)から作成
■「一般財源」が増えていない 宇治市も全国も
宇治市(歳入)
宇治市の決算カード(各年度)から作成
全国市町村(歳入)
総務省HP「全国市町村決算の概要」(各年度)から作成
4)経常収支比率
■「経常収支比率」が右肩上がり 宇治市も全国も
宇治市
全国市町村
宇治市の決算カード(各年度)から作成
総務省HP「全国市町村決算の概要」(各年度)から作成
府内自治体との比較
■府内自治体も90台後半
総務省HPから作成
各紙の決算カード(各年度)から作成
*「経常収支比率」とは
人件費、扶助費、公債費など
経常的経費に充当した一般財源等
経常収支比率=
地方税、交付税など毎年経常的に収入される一般財源、臨財債、減税補てん債
及び減収補てん債(特例)の合計額
×100
比率が高いと、財政が硬直化しているなどと言われます。収支の割合を見る指標の一つです。
家計で例えると、賃金や年金などの経常的収入(財源)によって、食費、家賃、ローン返済などの経常支出(経費)をどの程度賄えうるか、その割合が経常収支比率です。
経常収支比率は低ければ低い方が、貯金をしたり、自由に使えるお金が増えるのでよさそうですが、自治体財政では必ずしもそうとは言えません。
自治体の仕事は、市民の命と暮らし、権利を守り向上させることです。その仕事をサボると、財政指標は良くなります。数値は健全だが、市民の暮らしは悲惨だったというのでは、本末転倒です。
しかし、いくら高くても問題なしとはならないので、冷静な評価が必要です。
*根拠のない80%硬直化論
都市で75%妥当、80%を超えると硬直化しつつあるとされてきましたが、この認識は正しくありません。
この用語(経常収支比率)が登場したのは1969年です。当時、都市では73.3%~83.9%に分布していたため、当時の水準をもとに妥当だといっているだけです(「自治体の財政」著:初村尤二)