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市の財政③

宇治市の財政

発行 2020年8月

​要約版

5)経常収支比率が増加する要因

​1)経常収支比率は、歳出側「経常的経費に充当した一般財源等」を分子にして、歳入側「毎年収入される一般財源等」を分母にして除したもの。

2)前ページで示したように、宇治市も全国の市町村の集計も歳入側の一般財源(分母)は、ほぼ横ばいです。

3)一方、歳出(例えば民生費(扶助費)など)に充当する一般財源(分子)は増加しています。

​4)分母(財源の一般財源)が増えずに、分子(歳出に充当する一般財源)が増えると、数値(経常収支比率)が大きくなります。

宇治市財政の民生費(扶助費)と充当した一般財源

民生費と充当一般財源(2019年度).jpg
扶助費と充当一般財源(2019年度).jpg

6)歳出(例えば民生費(扶助費))に

  充当する一般財源が増加する理由

 政府の経済政策の失敗、国の福祉施策が不十分であるため、貧困と格差が広がり、生活保護費の増大など社会保障費が増大している。こうしたことから、宇治市だけでなく、全国の市町村の集計で民生費(扶助費)が増加している。

民生費4項目の推移(総務省決算状況調べ).jpg

総務省ホームページの決算状況調から作成

生活保護推移(宇治市統計書).jpg

宇治市統計書から作成

7)歳入側の一般財源が増加しない原因

 歳出に充当する一般財源等が増加しても、歳入の一般財源等が、それに見合って増加すれば、経常収支比率は増加しません

​ 歳入側の一般財源が増えない原因があります。

地方一般財源総額実質同水準ルール

地方一般財源総額の推移

​(地方財政計画ベース)

地方財政計画(一般財源総額).jpg

​地方税収等は地方税収と地方譲与税の合計。地方交付税等は地方交付税と地方特例交付金の合計。出典:総務省資料より平岡和久氏作成(「住民と自治」20年3月号から)

​「2011年度以降、国税収・地方税収の回復傾向が続くなかで、地方一般財源総額は、2014年度の消費税引き上げの影響分を除けば、ほぼ横ばい」(「人口減少と危機のなかの地方行財政」平岡和久著)

*地方一般財源総額 実施前年度同水準ルール

(1)2000年代、小泉政権の構造改革で地方歳出総額が抑制され、地方財政危機を招きました。その後一定の復元が図られましたが、不十分なものでした。

(2)2011年度から地方一般財源総額実質同水準ルールが導入されました。

 地方側からみれば、地方経費を抑制しようとする財務省の圧力に対して地方一般財源総額を安定的に確保するためのルールとしての側面があります。

​ 財務省側からみれば、社会保障費の地方負担の自然増や地方交付税の法定率分の増加などのなかで地方費を抑制するタガをはめる手段でもありました。

■地方財政計画の抜本的な転換を

学者の指摘

 これまでの地方財政計画の実質前年度同水準ルールを転換することなしには、自治体財政の充実はないものであり、自治体財政の充実なしには地域の困難を抜本的に改善することはできないのです。

​ そのためには、自治体現場が緊縮政策や自治体戦略2040構想に追随して自治体リストラと緊縮財政を先取りするのではなく、必要な地域財政需要に対する住民合意をもとに地域財政需要に応えるぎりぎりの努力を勤めるとともに、自治体財政の充実とそのための国・地方財政の抜本的な改善を国に求めていかなければなりません。(「住民と自治」20年3月号 平岡和久立命館大教授)

総務省の審議会

2019年12月3日

 総務省の地方財政審議会「今後目指すべき地方財政の姿と令和2年度の地方財政への対応についての意見」(2019年12月3日)は、「地方自治体が、創意工夫を凝らしながら、地域の実情に応じた取組を推進し、住民生活の安心と安全を確保する役割を適切に果たしていくためには、確固とした地方財政の基盤が不可欠である」との認識を示し、また、地方財政の歳出に関し「地方財政計画における近年の歳出の推移を見ると、国の制度に基づく社会保障関係経費の増加を、給与関係経費や投資的経費(単独)の削減で吸収してきており、歳出総額は、ほぼ横ばいで推移してきた」「給与関係経費、投資的経費ともに、ピーク時から大幅に減少しており、喫緊の課題への取組も求められる中、これまでと同様の対応を続けることは困難な状況となっている」との現状認識を示しました。

 

 平岡和久立命館大教授は「地方財政審議会の意見は、地方一般財源総額の前年度実質同額水準の枠組みが限界にきていることを示唆しています」(「人口減少と危機の中の地方財政」)と指摘しています。


 財務省の財政制度審議会「令和2年度予算の編成等に関する建議」(2019年11月25日)では、一般財源総額実質同一水準ルールの継続を建議しました。
 実際の2020年度予算は、財政制度審議会の線で編成されました。

全国市長会の政府への提言

2019年11月14日

■都市税財源の充実確保に関する重点提言

1.地方交付税の総額確保と法定率の引き上げ

 ・地方の安定的な財政運営に必要な一般財源を確保すること。

  基準財政需要額は、地方単独事業を含めた社会保障経費の増嵩等、都市自治体の実態を的確に反映すること。

​2.都市自治体の事務執行に支障が生じることがないよう補助率、補助単価等を実態に即して改善し、(以下略)。

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